今年の暮れもいよいよ押し詰まってきた。丸の内の三菱一号館美術館へ『ボストン美術館 ミレー展』を見に行く。ミレー展とはいうけどより正確にいえばバルビゾン派展でしょうね。バルビゾン派とはフォンテーヌブローの森に魅せられてフランスのバルビゾン村に住みついたりわざわざ絵を描きに訪れた画家たちのこと。
もちろんその代表格がジャン=フランソワ・ミレーなのだが。館内に一歩足を踏み入れて気づくのは、とにかくやたらめったらフォンテーヌブローの森を描いた絵が多いこと。これもそう、あっちもそう、と正直いうとだんだんうんざりしてくる。(笑)
僕はあまり風景画は好みではないとはいえ、これだけたくさんの自然主義的な風景画を一堂に見せられるとさすがに清らかな心洗われる気持ちになるのだった。
そんな中にクロード・モネの《森のはずれの薪拾い》なんて絵までひっそりと紛れ込んでいたりするから油断できない。モネというと印象派の代表選手だが、もともとはバルビゾン派の影響を受けているんだね。
で、まあそういう気持ちになっているところへ持ってきてミレーの農民たちを描いた絵が目の前にくる。本展覧会の目玉《種まく人》は、思った以上に大きなカンヴァスいっぱいに堂々とした体躯の農夫が大股で闊歩する姿が躍動感たっぷりに描かれた絵だった。いままさに農夫の手ずから畑に蒔かれた種が飛び散る様子まで克明に捉えている。
他にも《刈入れ人たちの休息》や《羊飼いの娘》などどこかホッとするような束の間の休息を描いた絵もいいし、《落穂拾い》や《晩鐘》を思わせるような《馬鈴薯植え》もよかった。《編物のお稽古》などには色使いといい構図といい題材といいフェルメールに通底するオランダの風俗画の趣きがあった。
ミレーってやっぱりいいなあ。なにか郷愁を誘うようなね。
三菱一号館美術館はずいぶん久しぶりで、『Chardin シャルダン展』以来かも。ここの美術館独特の木床を歩く靴音がカツカツ響くのが僕はすごく好きだったんだけど、今回ほとんどのところに絨毯を敷きつめていたような気がして、あれ前からそうだっけなあ?
あと、迷路のようにわかりづらいルートはいつものことながらちょっとアレだけどね。でも丸の内という大都会の只中に小さな森のような庭のような憩いの空間があって、さらにそのなかに雰囲気のある素敵な美術館って、いいですよね。僕はこの美術館にくるとちょっとテンション上がるのだ。ミレー展は年明け早々まで。是非お見逃しなく。