ヒロシコ

 されど低糖質な日日

2014-01-01から1年間の記事一覧

『ボストン美術館 ミレー展』感想

今年の暮れもいよいよ押し詰まってきた。丸の内の三菱一号館美術館へ『ボストン美術館 ミレー展』を見に行く。ミレー展とはいうけどより正確にいえばバルビゾン派展でしょうね。バルビゾン派とはフォンテーヌブローの森に魅せられてフランスのバルビゾン村に…

ブルース・チャトウィン『黒ヶ丘の上で』感想

ブルース・チャトウィン『黒ヶ丘の上で』読み終る。どの一瞬も疎かにしないこまやかで美しい自然描写と、どの視点も止まったようにゆっくりと流れる時間がまるで僥倖のごとく心地よい1冊。 ふたりは雨の中、羊道を登った。丘は雲に隠れていた。低く垂れ込め…

桐野夏生『ポリティコン』感想

桐野夏生さんの『ポリティコン』(上)(下)読みおわる。いきなり不穏な空気感のなかではじまるので、もっとオドロオドロシイ話になるのかと思ったけれど、「オ」が抜けたどちらかというとドロドロした話だった。読みはじめとおわりの印象がガラリと違うの…

映画『ゴーン・ガール』ネタバレ感想

『ゴーン・ガール』を見に行く。原作は全米で大ベストセラーになった小説で、日本でも後味の悪いミステリーとして話題になった(笑)。ぼくも読みたいなあとは思いながら残念ながら未読です。監督はデヴィッド・フィンチャーさん、主演はベン・アフレックさ…

西加奈子『漁港の肉子ちゃん』感想

西加奈子さんの『漁港の肉子ちゃん』読みおわる。西加奈子さんの本を読むのはじめて。というか日本の若い作家の本読むことも数少ないからなあ。単純にタイトルに惹かれた。いったいどんな話なんだろうって。総じて上手いよね、いまの人たち。こういうタイト…

映画『ホビット 決戦のゆくえ』感想

『ホビット 決戦のゆくえ』を見に行く。シリーズ完結編。手離しでということになるとそこはまあいろいろとなんだそのあれこれあったりなんかしちゃうわけですが、おおむねおおむね満足だし面白かったーという感じですかね。ドワーフの王トーリンが一族の財宝…

映画『フューリー』感想

『フューリー』を見に行く。逞しいブラッド・ピットさんが惚れ惚れするような裸体を晒して奮闘する戦争映画。ブラピさんは奮闘するけど孤軍ではないところが見どころ。すごく面白いよ、面白っていっちゃうのはアレだけど。ちなみにフューリーというのは戦車…

映画『紙の月』感想~横領の額が大きくなるにつれ宮沢りえさんはきれいな女に変身してゆく

『紙の月』を見に行く。正直悩ましい映画です。ものすごく好きかといわれたら絶対そうではないし、じゃあツマラナイかというとけっしてそんなこともない。というかそうとう面白い。終始ヒリヒリした緊張感が持続して。だけどやっぱりあまり好きにはなれない…

映画『インターステラー』感想~難解な映画ではあるがSFの世界でこの先もずーっと語り継がれるような傑作がついに登場した

『インターステラー』見に行ったらー。というくらいテンション上がりまくり。これどういう話かというと、いろいろあって人類が滅亡の縁に立たされていて、新たに移住可能な惑星を探し求めてマシュー・マコノヒーさんとアン・ハサウェイさんが宇宙の旅に出る…

水村美苗『 母の遺産 新聞小説』を読んだ感想~『金色夜叉』とか『家政婦は見た』とか

水村美苗さんの『母の遺産 新聞小説』を読みおわる。新聞小説というサブタイトルには二重の意味があって、ひとつはこの小説自体が実際新聞に連載された小説であるということ。もうひとつは、尾崎紅葉の『金色夜叉』という明治時代の代表的な新聞小説の影が通…

映画『天才スピヴェット』感想

『天才スピヴェット』を見に行く。どうでもいい情報だけど宮沢りえさんの『紙の月』でも見ようかと出かけて時間が合わず、急きょこっちに変更した。よって僕的にはまったくのノーマーク。だからってのもあるかもしれないが、めちゃめちゃ楽しかったです。す…

ポール・オースター『闇の中の男』感想

ポール・オースターさんの『闇の中の男』読みおわる。妻を亡くした書評家の老人が、眠れぬ夜を過ごすために頭のなかに創りだした架空の物語と、夫をイラク戦争で亡くしての失意のどん底にある孫娘と日がな一日映画を見ながら暮らすいっけん穏やかな日常生活…

映画『誰よりも狙われた男』感想~ありがとうフィリップ・シーモア・ホフマン

『誰よりも狙われた男』を見に行く。フィリップ・シーモア・ホフマン最後の主演作。それだけでも見る価値あり。というか絶対見たいと思わせる1本。冷戦後の、さらには9.11後のスパイ活動というのは、もはやこういうふうに敵味方の区分けさえも曖昧なほど複雑…

美術展『夢見るフランス絵画~印象派からエコール・ド・パリへ』感想

渋谷 Bunkamura ザ・ミュージアムで『夢見るフランス絵画~印象派からエコール・ド・パリへ』を見る。フランス絵画といえばいちどは目にし耳にしたことがある巨匠16人の名画71点が集められた展覧会だという。しかもそのすべてが日本の個人コレクションだとい…

映画『マダム・マロリーと魔法のスパイス』感想

『マダム・マロリーと魔法のスパイス』を見に行く。いや、よかったですよ。映画見ていてなんとなく話の行く先が読めてきたとき、「な~んだ、ツマラナイな」となる映画と、「こういうふうになるといいなあ」と思いながらも裏切られていい結果になる映画と、…

東京国立博物館『日本国宝展』感想

東京国立博物館へ『日本国宝展』を見に行く。50分待ちのアナウンスだったが実際には20分程度でなかへ入れてもらえる。館内も混雑はしているが、入場規制のおかげで、立錐の余地もないというほどではなかった。どの展示もすぐ近くまで寄って見ることができた…

『チューリヒ美術館展ー印象派からシュルレアリスムまで』感想

国立新美術館で『チューリヒ美術館展ー印象派からシュルレアリスムまで』を見る。ほとんど最初といっていいコーナーに、例のモネの《睡蓮の池、夕暮れ》がある。解説によるとこの絵はタテ2m×ヨコ6mもあるんですね。やはりデカい。けっこうな迫力です。とは…

アゴタ・クリストフの小説の映画化『悪童日記』感想

『悪童日記』を見に行く。アゴタ・クリストフの小説の映画化。この原作を読んだのはもうずいぶん前のことなのに、映画を見ていたらあのときの情景が、本の内容はもとより読書にまつわるさまざまなことまでもが、ありありと甦ってきた。原作同様、暗く重く陰…

クリント・イーストウッドの『ジャージー・ボーイズ』感想~生きている間にあと100回は見たい愛すべき映画

『ジャージー・ボーイズ』を見に行く。僕はふだん映画に点数や星をつける習慣はないが、でももしつけるとしたらこの映画には満点をつけたい。うんにゃ、100点満点の+10点、もしくは★5つ満点で+★1つでもいい。今年のベスト1も『ウルフ・オブ・ウォールスト…

ローラン・ビネ『HHhH プラハ、1942年』感想

ローラン・ビネさんの『HHhH プラハ、1942年』読みおわる。おっもしろかったなあ。全部で 257 の断章でできているから、僕のようにわりと細切れに読んでいても、いつでもスッと小説のなかに入ってゆける。けっして愉快な話ではないけれど、平明な語り口とユ…

映画『レッド・ファミリー』感想

『レッド・ファミリー』を見に行く。正確には『イヴ・サンローラン』を見に行って時間が合わず、急きょこっちに変更。驚いたことに都内では新宿武蔵野館と立川でしか上映していない。なんだけど、見おわったいま、まあ大々的に(公開を)やれる映画ではない…

映画『るろうに剣心 伝説の最期編』感想

『るろうに剣心 伝説の最期編』を見に行く。原作の漫画もほとんど知らないのに、シリーズ物は見はじめちゃうと最後まで見届けないと気が済まない性質で。でもすごく面白かったです。見てよかった。あらすじはどこから書いていいのかわからないし、あまりたい…

映画『猿の惑星:新世紀(ライジング)』感想

『猿の惑星:新世紀(ライジング)』を見に行く。これめっちゃ面白くて、こんなドキドキしっぱなしの映画見るの久しぶりな気がした。2時間超あっというま。上映時間が長いからってわけじゃなくても漏らしちゃうかと思った。それくらい、全編に緊張感がみなぎ…

映画『舞妓はレディ』感想

『舞妓はレディ』を見に行く。テレビのスポットCMでも流れるれいのアノ「♪ま~いこ~われぃでぃ~ま~いこ~われぃでぃ~」というメロディと怪しげな歌詞が、いまも僕の頭のなかでリピートをやめようとしない。とっても楽しい映画でした。――以下、少しネタバ…

大江健三郎『晩年様式集 イン・レイト・スタイル』感想

大江健三郎さんの『晩年様式集 イン・レイト・スタイル』読みおわる。なんかこれは少し難しかったなあ、という印象です。難しいというのはスタイルのことで、内容についてはいつものようにわりと平明で、やはりいつもの登場人物たちが出てきて最後は作家が生…

珍しいチリの映画『NO(ノー)』感想

めずらしいチリの映画『NO』を見に行く。驚いたことに、すっげえ画像が荒い。なんだこれ、「事故?」と思うレベル。あとでわかったのは、もちろん事故なんかじゃなくわざと古いカメラを使って、当時(1970~80年代)の本物のニュース映像と違和感なく融合す…

映画『プロミスト・ランド』感想

『プロミスト・ランド』を見に行く。とってもよかった。大好きなマット・デイモンさんに外れなし、ということを再認識する。ストーリーを手短に説明すると、シェールガス田を開発する大企業のエリート営業マン(マット・デイモン)が、田舎町の土地買収をは…

映画『グレート・ビューティー/追憶のローマ』感想

『グレート・ビューティー/追憶のローマ』を見に行く。あらすじもなにもあったものじゃない映画だけど、僕はこれ大大大好きですね。いい映画だった。くり返し見たい。でも、感想はおそろしく書きづらいかも。とにかくおしゃれで、おしゃれで、おしゃれ泥棒…

『オルセー美術館展 印象派の誕生ー描くことの自由ー』感想

国立新美術館で『オルセー美術館展 印象派の誕生ー描くことの自由ー』を見る。いやー、これはほ~んとによかったよー。お世辞でも誇張でもなんでもなく。1回順番どおりぐるりと見て歩いてまだ少し時間に余裕あったから、はじめに戻ってもう1回気になる絵をず…

映画『るろうに剣心 京都大火編』感想

『るろうに剣心 京都大火編』を見に行く。面白かったです。前回のもほとんど原作を知らないまま、下の子にあらましの世界観だけ教えてもらっていっしょに見に行ったのですが、思いのほかぐっときたので今回もついついふらりと。って、のっけから僕は誰になん…