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映画『君の膵臓をたべたい』完全ネタバレ感想~浜辺美波さんが超可愛いから2億点オーバー

つくづく映画はビジュアルだなあと思う。主役の山内桜良を演じた浜辺美波さんが超可愛くて、こっちは見ているだけできゅんとなったりニヤニヤしてしまった。まったく、成人した子どもが2人もいるおっさんが、よりによって17歳の女の子つかまえて超可愛いもきゅんとなったもないものだ。まさに犯罪レベルかもしれない。アブナイアブナイ。

でも実際問題、浜辺美波さんのビジュアルだけで、映画の採点基準が通常100点満点のところ軽く2億点オーバーくらいにはなった。僕は住野よるさんの原作小説を先に読んでいたくちなので、頭のなかでこれがドラマ化されるとすればこの役は誰だろうと想像しながら読んだのだ。そういった意味で、浜辺美波さんは原作の山内桜良のイメージそのもの。いや、遙かその上をいくといっても言いすぎではないくらいだった。

ちなみにもう一方の主役である志賀春樹役の北村匠海さんも好演で、浜辺さんと比べてちっとも遜色なく、ふたりのバランス的にもとてもよかった。だけどなんていうのかなあ、「クラス一地味な男子」という設定にしてはややだいぶイケメン過ぎるというか、嘘っぽい感じがした。逆にアレだけのビジュアルだったら周りの女子生徒がほっとかないでしょ、とやっかみも含めそう思う。

冒頭書いたように映画はビジュアルだという反面、小説は良くも悪くも想像というあやふやな作用が滑りこむ余地が残されている。クラス一地味な男子とイケメンといういっけん矛盾する要因が、頭のなかでどうにかこうにかひとりの人物のキャラクターとして共存できちゃうのである。だけどビジュアルは正直だからね。そこは映像化のもっとも難しいところだ。

映画『君の膵臓をたべたい』の感想はだいたい以上です。よって以下は蛇足になる。内容については原作小説を読んだときの感想どおり。あれでほぼ言い尽くした。細かい部分の整合性とかご都合主義にはいささか批判めいたことも書いているが、中二病男子の妄想がいさぎよく炸裂した、僕的には非常に満足いく素晴らしい話だった。

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

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実写版が原作小説と大きく違う点は、主人公たちの12年後のビジュアルが物語の前後、途中に加えられているところでしょうか。つまり全体の時間軸を現在の視点に移し替え、原作の舞台を回想形式で見せることによって、現在と過去を往ったり来たりする振り子のような構成にしたところだろう。なにかと比較されるセカチュウもやはり同じような形式を用いている。

ストーリーが一本調子になりがちな弊害を避けるためのドラマツルギー的理由というより、この場合、大人の人気俳優を登場させることによる大人の事情(興行上の都合)がたぶんにあったことは言を待たない。この戦略が成功しているか否かは、登場人物たちの現在のビジュアルを誰が演じたか、という問題とも密接にかかわってくる。

北村匠海さんの12年後は小栗旬さんが務めた。実力・実績とも申し分ない、いまや押しも押されもせぬ人気俳優だ。ふだんははっちゃけた役柄も多い小栗さんだが、本作では感情をぐっと抑えた物静かな役どころを見事に演じている。この人はこういう少し陰影のある役の方がはまる気がする。

もっとも小栗旬さんだっていまさら僕がいうまでもなくそうとうなイケメンで、いくら生徒には無関心な先生という設定にしたって(12年後、志賀春樹は母校の高校の国語の先生になっている)、女生徒たちが黙ってほっとくはずがない。だけどそういうジレンマも、春樹=北村匠海さんのケース同様ここではきれいにスルーされる。

あと桜良の親友・恭子の12年後は北川景子さん。このキャスティングは実に僕のイメージどおりだった。といってもくり返すが原作には12年後の設定はないわけで、あくまで原作を読みながら大人の俳優で喩えるならば恭子の役はどんな人かなあ、と僕が勝手に考えていたイメージですが。

ちなみに12年後がない原作小説は、実際どういうふうに物語が終わるかというと、桜良の死後ほぼ1年後、桜良の遺言にしたがって努力の結果友だちになった春樹と恭子が(ふたりは犬猿の仲)揃って桜良のお墓参りに行くシークエンスでジ・エンドとなるのだ。映画の小栗旬さんとは違って小説の春樹は表面上、桜良の死からだいぶ立ち直っているふうにもうかがえる。

それにしてもあの恭子のビジュアルが12年後に北川景子さんになるのだというのを見せられて、僕は有無もなく納得してしまった。ついでにどうせ12年後なんてもともとなかった体でいうと、もしもだよ、桜良がなにかの僥倖で通り魔にも襲われず、膵臓の病気でも奇跡的に死ななかったとしたら、12年後の桜良を演じる女優さんは誰が相応しいかなあと想像するのも楽しい。

広瀬すずさんでは少し若いだろうし、逆に内田有紀さんでは年齢的にちょっと上になってしまう。綾瀬はるかさんもいいし、深キョンや宮崎あおいさんなんてどうだろう。小栗旬さんとのバランスなども考えたうえで、なんだかありきたり過ぎてつまらないかもしれないけど新垣結衣さんことガッキー(逆だ!)あたりに落ち着くのかなあ、とかね。完全に僕個人の趣味ですみません。遊びですから。

遊びなんだけど、もし『君の膵臓をたべたい』の続編というか、12年後からはじまるあらたな物語が出来るとしたら、山内桜良の死をいまだ引き摺りあたらしい恋にも進めない小栗旬さんの背中を押し、繊細な気遣いで小栗さんの頑な心を溶かしていくガッキー、という絵柄は案外悪くない選択肢かと思うよ。ぜひその線で本格的なせつない恋愛ドラマを期待したい。以上、僕の妄想です。

話を戻します。映画版の12年後には実はもうひとつ大きな意味があって、母校の先生となった春樹は、図書室で偶然自分宛ての桜良の遺書を発見するのだ。これは原作小説にはなかった設定だった。原作では桜良の死後、彼女の自宅を訪ねた春樹がそこで「共病日記」(詳しくは小説の感想記事を読んでね)を読むと、そのなかになにもかももれなく書かれていたということになっている。

あの夜、「真実か挑戦かゲーム」で桜良は春樹にほんとうは何を聞きたかったのかという、この映画にして最大の問いも、図書室で発見される遺書でわかる仕掛けになっていた*1。というか、12年後の春樹がその問いに対する解を見つけるためにすべての回想シーンがあった、という大胆な捉え方もできるわけだ。

なお、ここでいうあの夜の「真実か挑戦かゲーム」の問いとは、桜良の「どうして、君はいつも私の名前を呼ばないの?」ってことだった。だけど、空気を読めず無情にもゲームは春樹が勝ってしまい、桜良はこの問いを春樹に投げかけることが永遠に叶わなかったのだ。そしてこの問いは、作品全体のテーマにもかかわる非常に深い問いなんですね。

図書室で見つかった遺書は春樹宛ての他に、恭子宛ての遺書も同封されていた。それを、まさにこれから結婚式に臨もうとするウェディングドレス姿の北川景子さん(恭子)の元に小栗旬さん(春樹)本人が届けるのだった。映画では12年の時を経てここでようやくふたりが歩み寄ることになる。北川景子さんと小栗旬さんのために用意されたクライマックスシーンだった(ガムくんもいたけど)。

原作小説の感想に書いたのであらためて詳しく書かないが、小説版で面白かった例の、第三者が自分(春樹)をどのように思っているかによって変わる【 】つき名前の変遷。なにしろ、春樹の名前は最後の最後まで明かされないからね。でもそういう小説ならではの面白さはさすがに映画ではいかせないので、代わりに12年後の図書室で遺書が発見される、というようなシチュエーションを考えたのかもしれない。映画は映画でいろいろ工夫している。

実はこの映画、劇場でスルーしてしまい、ようやく地上波のテレビで僕は見ることができたのだ。原作小説でも映画でも通り魔についてはほとんど描かれておらず、小説でかろうじて伏線として近隣で通り魔が出没しているということが新聞記事やテレビニュースで流れていた程度だった。映画ではそれすらも沈黙した。

あるいはテレビ放映用にカットされたのかもしれないが、その点僕にはわからない。テレビでこの映画を見たときに、桜良の死因が膵臓の病気ではなく通り魔に襲われた不幸な結果だというのが、ややとってつけたふうな印象に映った。原作を先に読んで事の成り行きを知っている僕にしてそうだったということは、初めて見た人はどのように思ったのか気になる。

最後にもうひとつ。あの日の春樹のメールが桜良に届いていたのかという重要な疑問も、小説では彼女のお母さんに携帯を見せてもらって春樹は確認している(よかった届いていた!)。それに該当するシーンは映画では見当たらなかったが、僕がうっかり見逃したのかそこもテレビ用にカットされていたのだろうか。なにしろエンディングのミスチルの歌もカットだったからなあ。楽しみにしていたのに。

結論。とはいえ浜辺美波さんだけで軽く2億点オーバーだからな。それだけは譲れない。 

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*1:あの夜というのはどの夜かというのは説明するのが面倒くさいので気になる人は原作小説を読んでね。ちなみに「真実か挑戦かゲーム」というのは、トランプのカードをお互い一枚ずつ引いて、そのカードの数が大きい方が勝ちで「真実か挑戦か?」と負けた方に聞く権利を得る。聞かれた方は、真実か挑戦かどちらかを選び、そこで真実を選べば聞いた方の質問になんでも正直に答えなければならない。挑戦を選べば、相手の言う無理難題になんでも挑戦しなければならない(まあ結果、どっちでも同じようなものだと思うけど)という単純なゲーム。「好きな人はいる?」とかふだん聞けないようなことでも思い切って聞けちゃう。