チキンライス島 7月11日（土）
夜になって行動開始。たぬきちさんの島内放送で、噂のフータさんが島にやって来たことを知るが、まずは日課の島内一周探検を済ませてからご挨拶に伺おうと思い、勢いよくテントを飛び出す。川べりを走っていると、大きな魚影も気になるが、それ以上にまだ足を踏み入れてない島の残りの部分が否応なしに気になる。川向こうへはどうやれば渡れるのか。
そんなことを考えながら浜に出ると、波打ち際で倒れている人を発見。意識があるのかどうかもわからない。何度も繰り返し呼び掛けてみて、ようやく僕の呼び掛けに反応してくれた。船乗りのジョニーです、とその漂流者は名乗った。乗っていた船が難破してこの島に流れ着いてきたのだという。仲間たちが心配しているだろうから連絡をとりたいのだが、通信装置が壊れて使い物にならないと困っていた。
壊れた通信装置のパーツはこの島の浜のどこかに埋まっているはずだから、砂浜を掘って探して欲しいと頼まれる。え、僕が？ なんで？ と一瞬思ったけれど、フータさんのテントを訪ねる以外、特に予定もなかったのでパーツ探しに協力することにした。失くしたパーツはおそらく全部で5個ほどだと、ジョニーさんはいった。
協力するとは答えたものの、この島にはスコップらしきものがない。まさか砂浜を掘り返すのに、しょぼいつりざおやあみやオノやジョウロでは何の役にも立たない。なのでジョニーさんには申し訳ないが、いったんパーツ探しは保留して、先にフータさんのテントを訪ねてみることにした。砂浜を掘る算段はその道々考えることにして。
初対面のフータさん、いかにも博識な学者さんという印象。フータさんはこのチキンライス島に博物館をつくりたいと宣言した。さすがインテリ、島にきて以来ただ魚を釣って、虫を捕まえ、木を刈って材木を切り出すことを楽しんでいるだけの僕とは人間の教養というか素養というか、要するに何もかもが違うなあと感心する。
フータさんに島で捕まえた虫や魚を研究のサンプルとして、そしてゆくゆくは博物館に展示してもらうことを夢見て、少しでもレアな虫や魚や化石？（化石なんてどこにあるのだろう）を集めてフータさんに寄贈できたらいいなあ。
そうそう。フータさんからテントを張る場所を確保してあげたお礼に、しょぼいスコップとたかとびぼうのDIYのレシピをスマホに転送してもらう。フータさんすごい。まるで僕の心が読めるみたい。スコップとたかとびぼうは僕が旬で喉から手が出るほどほしかった道具だったので。さっそく材料を集め作ってみた。
まずはしょぼいスコップでジョニーさんの通信装置のパーツ探し。乗りかかった船だもの（その船は難破したけどね）。だけど闇雲に砂浜を掘ってもパーツに当たる確率は低い。何かヒントになるようなことはないかと思っていたら、申し訳ないがちょっともう誰に教えてもらったのか忘れてしまったけれど、浜に水が吹き出しているところを掘るといいかも、と。アレ、誰だったかなあ？ ヒントくれたの。つぶきちさんか、キャンベラさんだったかヴァヤシコフさんだったか、フータさん？ もしかしてジョニーさん本人？
おかげでジョニーさんの通信装置のパーツ全部が掘り出せた。よかった。困っている人の助けになれて本当によかった。これでジョニーさんは仲間の人たちの元へ戻れるだろう。そしてそして、僕はとうとう念願のデビュー、川向こうへ渡ることができた。フータさんにもらったDIYのレシピで作ったたかとびぼうを使い、空高くジャンプしてみたよ。でももう長くなっちゃったので、この話はまた今度。
