ヒロシコ

 されど低糖質な日日

「三峯神社」関東屈指のパワースポットを訪ねる小さな旅

かつては山岳修験の道場として篤く信仰され、昨今では関東屈指のパワースポットとしても名高い三峯神社へ参拝した。三峯神社は埼玉県秩父市の、いわゆる奥秩父山塊に属する三峰山の山上、標高1100メートルの頂にある。都内に住む僕にとって、目的地まで片道3時間以上はゆうにかかるまさに小さな旅でもあった。

当社の由緒は古く、景行天皇が、国を平和になさろうと、皇子日本武尊を東国に遣わされた折、尊は甲斐国(山梨)から上野国(群馬)を経て、碓氷峠に向われる途中当山に登られました。
尊は当地の山川が清く美しい様子をご覧になり、その昔伊弉諾尊(いざなぎのみこと)・伊弉册尊(いざなみのみこと)が我が国をお生みになられたことをおしのびになって、当山にお宮を造営し二神をお祀りになり、この国が永遠に平和であることを祈られました。これが当社の創まりであります。(公式サイトからの引用)

f:id:roshi02:20181123173711j:plain

まずは三峯神社参拝の旅の玄関口、西武秩父駅を目指し、池袋駅で西武鉄道特急レッドアローに乗車する。なお、レッドアローというのは西武特急の愛称で、列車名は今回僕が乗車したのは「ちちぶ」号だった。他には「むさし」「小江戸」などがある。乗車には通常の乗車券と特急券が必要。特急券は全席指定。秩父駅までの料金は700円也。

f:id:roshi02:20181123173726j:plain

通常停車駅は4駅。終点の西武秩父駅には時間にしておよそ1時間20分で到着する。面白いのは途中の飯能駅から走行方向が逆になるため、座席シートを手動で反転させなければそのまま後ろ向きに走行することになる。ちなみに帰り(西武秩父駅発)はあらかじめ後ろ向きシートがデフォルトなので、飯能駅からは今度は進行方向に相対する。

f:id:roshi02:20181123173745j:plain

僕は乗車早々、朝食としてコンビニで買ったおにぎりやサンドイッチを食べたあとは、日頃の睡眠不足を補うように大部分の時間を寝て過ごした。特急列車は飯能駅からは山々の間を縫うように走るのだが、あいにくというか幸いなことにというか、このあたりの紅葉の季節はほぼ終了していた。

そんなわけであっという間に終点の西武秩父駅に到着。駅舎は2017年3月にリニューアルされたばかりだという。そこから今度は急行バスに乗り換えて三峯神社まで行く。事前に調べたところ、列車の到着からバスの発車までの乗り換え時間がそれほどなかったため、わき目もふらずバスターミナルをめざす。

f:id:roshi02:20181123173757j:plain

急行バスとはいっても形状はふつうの乗り合いバスなので、それほど多くない座席を上手く確保できなければ、終点までずっとつり革に掴まったまま立ちっぱなしで乗車するはめになる。実際、そういう剛の者も数名いた。途中のバス停2、3ヶ所に停まるものの乗降客はほとんど皆無。実質、直通運転だ。所要時間は渋滞がなければおよそ1時間30分。料金は片道930円也。

かつては麓の村と山頂までをつなぐ三峰ロープウェイというのがあったそうだが、2007年に運営会社の資金難やロープウェイそのもの金属疲労などの理由で廃止された由。昨今の三峯神社人気にあやかって、というか当て込んで、このロープウェイの復活が期待されるところだが、現実問題として再建にはいくつもの高いハードルがあるに違いない。

バスはところによって2台の車がようやくすれ違えるくらいの狭く急な山道をうねうねと上って行く。高所恐怖症の人には窓側の席はそうとうつらいかもしれない。僕はといえば、バスの車内でもあらかた惰眠をむさぼってしまい(帰りも同様)、同行のカミさんにいよいよ終点・三峯神社駐車場に到着する寸前に起こされるという始末だった。ほんと情けないくらいよく寝るんだな。

駐車場からは徒歩で。このあたりはまだ舗装されたゆるやかな坂道を上る。澄みわたった晩秋の高く青い空と白い雲。どこまでも見渡す限りの奥秩父の山々。前述したとおり紅葉には少し遅かった点だけが悔やまれるが、空気はまだそれほど冷たくもなく、絶好の参拝日和だったといっても過言ではないだろう。

f:id:roshi02:20181123173816j:plain

見晴らしがよく、遠くになだらかな山の稜線が一望できる。

f:id:roshi02:20181123173838j:plain

参道の手前にあるお土産屋さんを兼ねた食堂では、軒下に柿をつるしておりこの時期ならではの風情があった。

f:id:roshi02:20181123173858j:plain

よく陽の当たる店先では干し柿と大根干し。

f:id:roshi02:20181123173927j:plain

囲炉裏で焼かれるいもでんがく。おいしそう。

f:id:roshi02:20181123173945j:plain

境内の入り口の鳥居は三ツ鳥居という、見たまま3つの鳥居がくっついた非常に珍しい形をしている。正式なくぐり方の作法があるのかもわからないが、とりあえず頭を下げて真ん中の大きな鳥居の下をくぐる。

f:id:roshi02:20181123173958j:plain

三峯神社の神様の遣いは、動物界でいちばん徳が高いと言われているオオカミ(「大神」とも書く)であるため、この三ツ鳥居の前には狛犬ではなくオオカミが鎮座しているのだ。鳥居に向かって右側に「神徳(しんとく)」、左に「無邊(むへん)」の大神さま。神徳とは神の功徳のことで、無辺とは広々と限りのないこと。

一説によれば『もののけ姫』の犬神モロの君のモデルは、三峯神社の大神さまだとも言われているそうだ。

f:id:roshi02:20181123174014j:plain

f:id:roshi02:20181123174024j:plain

ここ以外にも境内の至るところに大神さまはいて、その姿形はすべて異なっているようだった。そういうのをすべて写真に収めるというのも案外面白い御利益があるかもしれませんね。三ツ鳥居前の大神さまはしゅっとして精悍な感じ、「随身門」前の大神さまはふだんよく見知っている狛犬に近い。

f:id:roshi02:20181128193448j:plain

さてその隋身門(ずいしんもん)。三ツ鳥居を過ぎ、しばらく坂道を上って行くと三叉路に出る。正面と右の道については後ほど説明するとして、本殿への参拝コースはそこを左折。すると圧倒的な威厳と格式でもって目に飛び込んでくるのが随身門である。貴人を警護する武士(この人たちを随身という)の装束をした守護神を左右に安置した門で、昔の仁王門にあたるのだという。

「三峯山」と書かれた大きな扁額にまず目を奪われる。それから煌びやかな彫刻の数々。左右の随身は俗に矢大臣・左大臣と称され、向かって左の弓矢をもっている像を矢大臣、右の兵杖を持った像を(なぜか)左大臣と呼ぶらしい。仁王像とは違って警備の武士といっても案外柔和な顔をしていた。

f:id:roshi02:20181123174041j:plain

f:id:roshi02:20181123174052j:plain

f:id:roshi02:20181123174134j:plain

f:id:roshi02:20181123174109j:plain

f:id:roshi02:20181123174119j:plain

この随身門を抜けた先は、舗装されてない道を少し下って行く。よく言われることだろうと思うけど、ここから体に感じる空気ががらりと一変することに驚いた。温度にして明らかにマイナス何度かは違うのだ。実際測ったわけではないのでアレだけど、体感的にピッと身が引き締まる冷気のようなものを感じた。

いよいよ拝殿に至る前の最後の石段を上る。正面に小ぶりな青銅の鳥居が見える。

f:id:roshi02:20181123174157j:plain

鳥居をくぐると右手には八棟灯籠がある。目を瞠るように大きな木製灯籠で、これは大変珍しいと聞く。なにしろ彫刻が見事だ。中心に納めているのはご神木の一部だろうか。

f:id:roshi02:20181123174232j:plain

拝殿に向かって左には、いかにも荘厳な作りの手水舎。これほどの装飾を施した手水舎を僕ははじめて見た。

f:id:roshi02:20181123174247j:plain

拝殿前には左右に樹齢800年を超えるというご神木の杉の木がそびえ立つ。見上げるだけで文字どおり背筋がシュッと伸びるが、参拝者はこのご神木に直に触って(抱きついて)氣をもらうことができるのだ。いや、このご神木、噂にたがわぬ実に立派な堂々たるものでしたよ。

f:id:roshi02:20181123174327j:plain 

拝殿前にはさらに、水をかけると赤い目の龍が浮かび上がるという石畳もあった。これを写真に撮って携帯の待ち受け画面にすると縁起がいいと大評判なのだとか。それ用に水の入った桶と杓子も用意されていて、とにかくひっきりなしに参拝客が水をかけるので、赤い目の龍は休む間もなくデフォルトで浮かび上がって忙しそうにしていた。

f:id:roshi02:20181123174641j:plain

そしてそして、三峰神社拝殿。一段と色鮮やかな彫刻が目を惹く。参拝も忘れて、ついつい見ほれてしまうこと必至。

 f:id:roshi02:20181123174537j:plain

f:id:roshi02:20181123174552j:plain

f:id:roshi02:20181123201102j:plain

f:id:roshi02:20181123174609j:plain

拝殿うしろにひっそりと本殿はある。

f:id:roshi02:20181123174620j:plain

無事参拝も終え、拝殿の左へ進むと社務所などがあるエリアに出る。この場所で氣守りを買い求め、さらにその先を行ったところに神の湯があった。日帰り入浴600円。今回は入浴せず。またいつか。

f:id:roshi02:20181123174706j:plain

まさかの土足厳禁カフェ「小教院」。

f:id:roshi02:20181123174737j:plain

山頂で飲めるコーヒーというのはどんなだろうと入ってみたら、メニューが540円か440円の二択だというのが個人的にツボだった。コーヒー紅茶類が一律540円で、一部を除くジュース類とコーヒーゼリーが440円。理由が知りたい。

f:id:roshi02:20181123174756j:plain

僕はブレンドコーヒー(お菓子つき)を注文。

f:id:roshi02:20181123174806j:plain

同行のカミさんはアメリカンコーヒーとコーヒーゼリーを。コーヒーゼリーは一日20食限定というからさぞかしレアメニューかと思いきや、恐る恐る「まだありますか?」と尋ねてみると、余裕で「ありますよ」という声が返ってきて拍子抜け。味はまあふつうに美味しい。

f:id:roshi02:20181123174817j:plain

店内は絶賛貸し切り状態だった。たまたま僕らが入った時間帯がそうだったのか、でも土足禁止なので冬場は女性はとくにブーツを脱ぐのが面倒だとかいろいろありそうで、流行ってるのかなあと、ちょっと心配。落ち着いたとてもいい雰囲気のカフェなのに。

しばらくカフェで休んだあと、今度は拝殿の右側を探索してみることに。このエリアには出雲大社や猿田彦神社など多くの摂末社がある。これまた同行した大学生の下の子が、「ものすごく効率的な課金システムだなあ」と罰当たりな感想を口にしてて笑っちゃった「そういうこと言うもんじゃない」といちおう叱っておくが。

猿田彦神社の名前を発見しても、僕には猿田彦珈琲しか思い浮かばないというね。まあ僕も人のことを叱れない。で、このエリアを素通りしているとき気づいたのだが、随身門から拝殿前の石段に至る道が、ちょうどこの下に見えるのだ。つまり来た道の一段上に位置する場所を僕らは折り返すように歩いていたことになる。

f:id:roshi02:20181123174838j:plain

先ほど随身門前の三叉路の話を書いたけどね、あのとき左に進めば随身門で、一旦直進してもう少し先を左折すればつまりこの場所に出たのだった。当地にご本山さんを祀った張本人の日本武尊(やまとたけるのみこと)の銅像が「やあ」と手を挙げて出迎えてくれる。やたらと挙げた手がでかくてなにやら不自然なバランス。失礼だけど今度こそ本気で笑っちゃった。

f:id:roshi02:20181123174853j:plain

神聖な修行の場と言われるだけあって、極真空手の創始者大山倍達もここで修行をしたらしく、このエリアに氏の碑が建立されている。空手家(武道家)はすべからくこの地を訪ねよ、だ。あと、さすがに碑まではないが、お笑い芸人にもここで修行(練習?)して有名になった人たちがいるのだとか。スケートの浅田真央さんもここの特別な氣守を手にして運気が上がったというから、まさにパワースポットの面目躍如である。

f:id:roshi02:20181123174908j:plain

そんな強力なパワースポットには似つかわしくない楓の落ち葉が可愛らしい。

f:id:roshi02:20181123174932j:plain

先刻来の三叉路で随身門とは今度は正反対に向かう石段を上ると、遙拝殿に出る。そこから三峰神社奥宮を参拝出来るほか、風光明媚な秩父盆地を一望できる。ちなみに奥宮までは開山時期に限り立ち入ることが出来るのだが、境内から徒歩で山道を1時間半もかかるのだとか。散策というよりもはや険しい登山なのかもしれない。

f:id:roshi02:20181123174948j:plain

なので今回はこの場で奥宮を遙拝して、三峰山三峯神社を下山すべく再び急行バスで秩父市内まで戻って来た。間もなく日も暮れかかるという時間だったが、遅い昼食に秩父市内のお蕎麦屋さんで、鴨南蛮蕎麦を食べた。1400円くらい。ふつうに美味しかった。

f:id:roshi02:20181123175016j:plain

西武秩父駅に隣接する温泉施設兼お土産屋さんで、一緒に来なかった上の子へのお土産を買う。秩父のお酒。ついでにフードコートで秩父名物だという味噌ポテトを食べる。有名なちちぶ餅(水戸屋本店)も買ったが、帰りのレッドアロー号で食べてしまった。柔らかくて美味しい。写真はうっかり撮り忘れる。特急車内ではあとは池袋駅まで行き同様ほとんど寝て過ごす。

f:id:roshi02:20181123175031j:plain

関連ランキング:和菓子 | 秩父駅御花畑駅西武秩父駅

この日、三峯神社で買い求めたお守り(氣守)には赤青緑ピンクの4色あり、どれでも各1000円。僕は青の氣守を。中には三峯神社のご神木が入っているそうで、お守り袋の表側には「氣」の刺繍が、裏側にはオオカミ(大神さま)がデザインされている。

f:id:roshi02:20181123175042j:plain

なお、三峯神社といえばこの話題を避けて通れないのが、白い「氣守」のことだろう。くだんの浅田真央さんが手にしたというお守りもこれのこと。結論から言えば、現在は頒布を休止しているそうだ。白い氣守は毎月1日だけに頒布していた非常にレアな、それだけにふつうの氣守よりも特別強い氣のお守りだという。頒布休止については三峯神社の公式ツイッターでもこのように――、
 

その内容を引用すると下記のとおりである。 

平素当社を御崇敬賜り厚く御礼申し上げます。
さて、平成30年4月1日(日)の『白』い『氣守』の頒布に際し、周辺道路が大渋滞となり、近隣住民の皆様をはじめ周辺道路を利用する皆様に御迷惑をお掛け致しました事、深くお詫び申し上げます。
これまで『白』い『氣守』頒布日の渋滞について関係機関と連携し、対策を協議・実行してまいりました。
しかし、抜本的な解決には至っておらず、このままでは更なる混乱を招きかねないことから、平成30年6月1日(金)から確実な解決策が整うまでの間、やむを得ず『白』い『氣守』の頒布を休止させていただくことと致しました。
次回以降の頒布を心待ちにしていただいた皆様、また、平成25年7月から30年5月の頒布まで、長時間お待ちいただき『白』い『氣守』をお受けになられた皆様には、心よりお詫び申し上げますとともに、この苦渋の決断をどうか御理解いただきますよう切にお願い申し上げます。

三峯神社へと続く三峰山の事実上の一本道が当日は早朝から大渋滞を起こし、くだんの急行バスで通常1時間30分かかるところを最長8時間近くかかることもあったというからあとは推して知るべしだ。

以上、「三峯神社」関東屈指のパワースポットを訪ねる小さな旅の記録でした。