ヒロシコ

 されど低糖質な日日

『ロッキー』シリーズを一度も見たことがない人が世の中にはいるのだという衝撃(ネタバレ注意)

若い人と映画の話をしていたら、これまで劇場やテレビやDVDなどで『ロッキー』シリーズのどれかひとつでも一度として見たことがない、という人がいて衝撃を受けた。けれどまあ、その人もなんとなくストーリーは知っているという。

『ロッキー』という映画は新シリーズが作られるたびに派手なCMがあったし、あらゆるジャンルでさんざんパロディが使いまわされ、はたまたコントのネタにまでなったからね。ただ、実際映画を見たことがない人がだいたい勘違いしているのが、『ロッキー』第1作目で、ロッキーがチャンピオンのアポロに勝利して終わるというもの。

知ってる人は当然知ってるでしょうけど、あれ実はロッキーの僅差の判定負けなんですよね。なのに、フィラデルフィア美術館前のシーンとともに超有名な「エイドリア~ン!」というラストの雄叫びシーンをなにかで偶然見ちゃうと、スポ根ドラマなんだし、最後は冴えない挑戦者が勝ってヒーローになるという感動のストーリーを思い描いたとしても全然不思議じゃない。

で、そんな思わぬところから見てないのに見たというウソがバレちゃったりするわけだ。気をつけたいですよね。ところが『ロッキー』を実際見てなくても、シリーズ続編である『ロッキー2』のストーリー紹介や解説を読むと、『ロッキー』(第1作)の結果が図らずもわかってしまうという法則を僕は発見したのだ。例えばですよ――。  

 フィラデルフィアのしがない4回戦ボクサー、ロッキーに突然チャンスがやってくる。世界ヘビー級チャンピオンのアポロが人気取りのため、格下の相手と戦うことを宣言したからだ。かくして、薄汚れた下町の中、ロッキーのトレーニングが始まった……。(Amazon『ロッキー』ストーリーより)

これが、Amazonで紹介されている『ロッキー』のストーリー。ただこれだと当然ネタバレを意識して、ロッキーがアポロとの試合に勝ったの負けたのか肝心なところがわからないようになっている。映画のストーリー紹介なんてだいたいこんなもので、見る前から結果がわかってしまえば魅力も半減。書かないのがふつう。ところが――。

 ヘビー級タイトルマッチで辛くも王座を守ったとはいえその戦いぶりに非難が集中したアポロに対し、敗れたりとはいえフルラウンドに感動のファイトを展開したロッキーには熱烈な賛辞が集中。巷に流布するアポロ再起不能の噂を打ち消そうと、アポロ陣営は再度ロッキーとの再戦を宣言するが……。(Amazon『ロッキー2』ストーリーより)

ほらね。これが『ロッキー2』のストーリー紹介記事。「ヘビー級タイトルマッチで辛くも王座を守った(中略)アポロ、敗れたりとはいえフルラウンドに感動のファイトを展開したロッキー」ってふうに、ちゃんと『ロッキー』のネタバレ結果堂々と書いてるし。なんだロッキー負けたのかって、わかる。

この世界で最初に僕だけが発見した法則によると、同様に『ロッキー2』を見てなくても『ロッキー3』のストーリー解説を読めば、ロッキーとアポロの再戦の結果もわかるのではないかと。

世界チャンプとなり、一家水入らずの生活を送っていたロッキーは、強敵黒人ボクサーの挑戦を受けることに。しかしハングリー精神を忘れたロッキーは、あえなく敗れ去る。再起をかけたロッキーにかつての宿敵アポロがトレーナーとして名乗りをあげる……。(Amazon『ロッキー3』ストーリーより)

もう最初に「世界チャンプとなり」って書いてある!(笑)つまり、ロッキーはアポロとの再戦に無事勝利したわけだ。そしてなんと、この『ロッキー3』ではあらたな強敵ボクサーがロッキーの前に名乗りをあげている。しかも一度はその挑戦者に敗れたことまでわかる。だがこのままでは終わらないのがロッキーのロッキーたるゆえんだ。当然再起をかけた試合がやってくる。となれば試合の結果が気になる。でも大丈夫。そこは法則にしたがって『ロッキー4』のストーリー紹介記事を読めば――。

 2度の戦いでロッキーと友情で結ばれていたアポロが、ソ連人ボクサー、ドラゴにリング上で殺される。この世界最強の敵と戦うべくロッキーはソ連へ遠征する――。(Amazon『ロッキー4』ストーリーより)

おや? おやおや? ちょっと予想外のことが起きてしまいましたね。これではロッキーが再起をかけた試合の大事な結果がわからずじまいだ。困った。そればかりか、話の展開が起承転結の結みたいに宿敵だったアポロの死というパラダイムシフトを起こし、ロッキーはアポロの弔い合戦のためソ連(という国もいまはないのですが)にまで遠征してしまっている。これはますます困った。 もう少し先を見よう――。

ソ連でドラゴに勝利したものの、ロッキーは脳障害が発覚して引退を決意、トレーナーへ転身する。そんな時、彼の前に凄い新人ボクサーが現れた。(Amazon『ロッキー5』ストーリーより)

ホッ。今度は法則どおり『ロッキー4』のソ連のボクサー・ドラゴとの試合ではロッキーが勝利したことが、『ロッキー5』のスト―リー紹介でわかる。よかった。

結果論ですが、ロートルボクサーであるロッキーが『ロッキー3』でアポロに続く強敵黒人ボクサーとの再戦に、もし負けていればそこで即引退、『ロッキー』シリーズも3で打ち切り、ソ連遠征などもっての外、ということにおそらくなってたでしょうから、『ロッキー3』の再戦でもロッキーは勝ったのかなあ、というくらいの想像はできそうだ(少々強引ですが)。 

 (前略)リングを去った彼は、愛する妻エイドリアンに先立たれ、地元フィラデルフィアで経営するイタリアン・レストランで、客の求めに応じて現役時代の昔話を語って聞かせる日々を送っていた。(中略)エイドリアンの命日に墓参りをしたロッキーは、自らの孤独を痛感せずにいられなかった。ロッキーは心の喪失感をぬぐうため、再びボクシングを始めることを決意する。(中略)プロ・ボクサーに復帰したものの、大きな野望を抱いているわけではなかった。しかし、ある番組がきっかけで、現役ヘビー級チャンピオン、ディクソンとのエキシビジョン・マッチが企画され、ロッキーは最後の夢に向かって猛トレーニングを始めた。そして、遂に大観衆が詰め掛けたラスベガスのリングに上がっていく…。(Amazon『ロッキー・ザ・ファイナル』ストーリーより)

そしていよいよファイナルまで来ました。ファイナルではロッキーは既にリングを去っているので、『ロッキー5』でロッキーの前に現れたすごい新人ボクサーに敗れて引退したのか、あるいは現役チャンプのまま気力体力の限界で潔く引退したのか、残念ながら今度こそこれだけでは判断できかねる。

というわけで、『ロッキー5』の試合結果が気になる人はAmazonでDVDかBlu-rayを買うか、もしくは某TSUTAYAでレンタルして実際に自分の目で確かめてください。なおネットでネタバレ記事を検索すれば、当然すぐ見つかりますけどね。そういうところ、ネットって便利なようでツマラナイなあと僕は思います。

今日の【結論】。『ロッキー』第1作目の試合で、ロッキーはアポロに僅差の判定で敗れたということを勘違いして、知ったかぶりして他人にウソの結末を吹聴しないようにしようということでした。  

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