ヒロシコ

 されど低糖質な日日

映画『ベイマックス』感想

『ベイマックス』を見に行く。もう公開時期も大きく外れたことだしこのままスルーするつもりだったけど。ひとまず大学受験が一段落して結果発表待ちで、学校も事実上春休み状態の下の子に誘われたのでホイホイついて行く。

ベイマックスというのは平たくいうと介護ロボットです。しばらく映画館などで見かけたあのぷよぷよした張りぼて人形のイメージから、物語はてっきりトトロ的なハートウォーミングなものなんだろうなあと勝手に想像していた。

それにしてもベイマックス可愛い。もう圧倒的に可愛い。マシュマロみたいな体躯に鈴をモチーフにしたような頭というか顔がのっかってるだけ。シンプルといえばこの上なくシンプルな造作なのに不思議と可愛い。

実物を見るとわかるが、動きがまたいかにも歩きはじめたばかりの赤ちゃんみたい。風船のようにプ~ッと膨らんで登場したかと思うと、短い足でチョコマカ動く。自分のお腹と横幅が邪魔で狭い所を通るのにもひと苦労。あっちこっち意図せずぶつかっては棚に並べた本などもバラバラなぎ倒していく。

こんなので介護ロボットとして無事職務が果たせるのかと不安になるが、抱き上げたりする力はありそうだし、いざというときはクッションになって相手の体重を支えるし、なによりぎゅ~っとされるだけで心地よさそう。見ているだけでも心和む感じは、むしろ介護にうってつけなのかもしれない。

なにより傷ついた人・弱っている人にたえず寄り添う姿勢、「もう大丈夫というまで離れません」という気持ちこそがいちばんのセールスポイントだと思った。寄り添うことに勝るやさしさはないと僕は思っているので。ましてやさしさとか正義とか友情というこの映画の明確なテーマは、ベイマックスの存在あってこそ。

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どこまでネタバレしていいのかわからないが、原題は『BIG HERO 6』といって、おそらく日本で展開された宣伝とはいささか趣が異なる内容なんだけど、だからってベイマックス抜きにはこのテーマは語れないよなあと僕は思うわけです。

と、いうこともいずれ、というか既に広く知れ渡っているかもしれないですね。映画の後半ガラリとテイストが変わった先にいったい何が起こるのか。とりあえずここでは書かないことにしますが、まあ予想外な方向に舵は切るけど決してツマラナクなることはない。

終わってみれば、これだけ起承転結というか序破急がきっちりした構成もめったにないくらい。逆に破綻がないのが唯一の欠点になりそうなくらいだ。

物語の舞台となるのは、近未来の東京とサンフランシスコを折衷したようなヘンテコリンな街だけど、僕はちっともイヤな感じはしなかった。この都市の造形とクオリティ、とくに絵の質感と量感のリアルさは素晴らしかった。それだけでも見ているのが楽しかった。

主人公は14歳の天才少年ヒロ。彼にはタダシという兄がいる。予告編にもあるとおり、タダシは不慮の事故で死んでしまう。ベイマックスは実はそのタダシが遺したロボットだった。

互いに尊敬しあい仲がよかった兄の死を受け入れられないヒロに、ベイマックスがときに鬱陶しいくらいけなげにやさしく寄り添う。タダシの仲間たちもいまではヒロを気遣う大切な友だちになった。

タダシはヒロがつまづきそうになるといつも、「視点を変えてみるんだ」とアドバイスを送る。僕は映画をみながらずっとこの言葉の意味を探っていた。ひとつの局面を反対側から見るとか、正面ではなく斜めから見るとか、視点を変える方法についてはいろいろある。

でもね、タダシがいいたかった視点を変えるという言葉の意味は、別の角度からモノを見るというより、壁に当たってその壁を乗り越えようともがき苦しんだ人だけが、ぐるりと一周まわって元の場所に戻っとき、まるで最初からそこに存在したかのように出口が見つかることもあるよ、という意味のことではないかと思った。

などと、いつまでもあらすじを書かない映画の感想を書き続けるのも苦しくなったのでこのへんでよします。もっと具体的な話が知りたい人は探せばそれはすぐ見つかるはず。いや、思いがけず楽しい映画でした。スルーしなくて本当によかったわ。ベイマックス!

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