ヒロシコ

 されど低糖質な日日

映画『インターステラー』感想~難解な映画ではあるがSFの世界でこの先もずーっと語り継がれるような傑作がついに登場した

『インターステラー』見に行ったらー。というくらいテンション上がりまくり。これどういう話かというと、いろいろあって人類が滅亡の縁に立たされていて、新たに移住可能な惑星を探し求めてマシュー・マコノヒーさんとアン・ハサウェイさんが宇宙の旅に出る。

で、そこの宇宙にはブラックホールちゅう漆黒の闇があって、こんどはそのブラックホールの縁でなかに引きずりこまれそうになりながらなんだかんだともがく。どっちにしろ恐怖の縁からは逃れられないのか? というね、すっごく大雑把にいうとそういう話だ。

――このあともいわゆるネタバレになるような映画の核心部分については誓ってなにも書いてませんが、それでも「大どんでん返しがありますというのもある意味ネタバレ」という程度にはネタバレあります。

アン・ハサウェイさん目が大きくて目力が半端なくてなにより美人だし、僕大好きな女優さんだからもうそれだけでうれしい。ほかにも「あっ」と小さく悲鳴をあげそうになるくらいこれまた僕が大好きな俳優さんが、メインクレジット以外で出てきたりする。そういうのも書いちゃうとアレなんだろうなあ。やれやれ。

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テレビスポット等で「愛する娘と別れて」とか「生きて帰れるかわからない」とか「宇宙を超えた家族愛」とかさんざん宣伝されてて、僕もひたすらそういう感動物語なんかなあと思って見たわけだけども、むしろぜんぜんちがう映画過ぎてぶったまげたというかぶっ飛んだ。考えてみたら監督はクリストファー・ノーランさんだものね。一筋縄ではいかない。

さっきのCMとか予告編も大筋ではまちがってないしもちろんウソじゃない。んでも、見終わった印象はう~ん複雑。という奥歯に物が挟まったようないいかたしかできないのは、逆によい方向に期待を裏切られたというか期待を大きく超える出来栄えに大満足したからだと思ってください。

ときどき本編より面白い予告編があるけど、これなんかあきらかに逆。圧倒的に本編のが面白い。むしろそっちが正解なんだけどね。などとよけいなことをグダグダ書いて、どこらへんから切りこんだらいいのか正直迷っている。まだ公開後まもないこの時期になにか感想らしきことを書くのは難しんだよ。

子もどものころ、図書室の天体図鑑とかで銀河系の絵やブラックホールの想像図みたいなものを見て、なんとなく頭のなかにイメージしてきたり憧れたり怖れたりしていた宇宙の光と闇を、まさに実写化してもらった感じもある。

正直いうと、映画のなかで語られる哲学や科学や宇宙物理学について僕は3分の1も、うーん10分の1程度も(もっとか)理解できないかもしれなくて、そういうのわかればより楽しめるんだろうなあとは思う。でもわからないなりにやっぱりこのての話は面白いし魅力的なのだ。

たとえばブラックホールは、なんでも飲みこんでしまう宇宙の強力な磁場だとか、ワームホールは宇宙の近道・抜け道だとか、その程度の理解度でも十分楽しくてワクワクする。ワームホールってワープのこと? みたいな。

エライ科学者や物理学者や宇宙の専門家が「あそこおかしい」といまさらいい出したとしても、たとえ映画のなかで起こること見せられたことの全部がハッタリだったとしても、僕はそれでも「すげーなー」と思っちゃったし惹き込まれたし感激したし感動したからもういいんだ。

とくにラストへ向けてのあの怒涛の展開がもたらすありえないくらいの緊張感の持続に僕は打ち震えた。それこそ見てる僕自身がブラックホールの強力な磁場というか重力そのものへ引きずり込まれていくような本物気分を味わうことができた。

なんかすいませんね、ずっとこういうもやもやと抽象的なことしか書けずに。

SF的なことはあとは実際見てもらうほかないんだけど、それ以外のところででもう少し書いておくと、地球を救う人類を救うという高尚な理想や使命感と、家族を守りたい家族や恋人の元へ帰りたいもう一度会いたいという個人的な愛(それをエゴというならばエゴ)とは対極にあるものなのか。

そのあたりのことで主人公たちは葛藤するわけです。宇宙で。この葛藤こそがストーリーを大きく推進したり左右する原動力になる。だいたいの物語はそういうものだろうけど、なにしろ舞台が宇宙なだけにとんでもない壮大なスケール感が出るよね。脚本が実によく考えられている。

『ゼロ・グラビティ』のときにも思ったんだけど、あれも重力というのがテーマで、もともとの原題は「グラビティ(重力)」なのに邦題はなぜかゼロがくっついちゃった。

その重力は宇宙空間は無重力でも、宇宙ロケットや宇宙ステーションにいる人間たちには人間関係というやっかいなものが存在して、地球でも自分を待っている家族や友人たちなど、自分をどこかにつなぎとめておく碇(いかり)とか錘(おもり)みたいな存在があるよねという話でした。

それってつまり「重力」じゃないかと。自分をどこか一箇所につなぎとめる「重力」みたいなものっていうのは、ふだんはなんだか鬱陶しくて煩わしいだけの重みでしかないが、いざ失ったり失いそうになったら命がけで守ろうとしたり必死にしがみつくだろうなあ。

結局『ゼロ・グラビティ』もきのう見た『インターステラ―』も、映像があまりに素晴らしすぎたのでうっかり見落としがちだけれども、我々がふだんなにげなく身にまとっているもうひとつの「重力」についての話でもあったのではないかと思った。

ややこしいのはね、くり返すけど宇宙にはもうひとつブラックホールという強力な重力をもったいまだよく解明されていない天体があり、うっかりするとそっちに引きずり込まれてしまうことなんだ。そこらへんの謎がねえ……、おっとアブナイ。

まあだけど、大事な家族がいる人かつていた人、愛する恋人がいる人かつていた人には、ぎゅーっと胸しめつけられるようなたまらない悲しみとせつなさが押し寄せてくるから覚悟しておいた方がいいですよ。僕なんていまでもあの状況を自分の身に置き換えて想像するだけで苦しいもの。

それと、人類はこれまでも悲惨な戦争を経験してきてそれでもいまだに戦争はなくならないしエボラ熱ウィルスのような病気も蔓延して、一方では地球温暖化のような気候変動も確実に起きている。

あるいは映画の話だけではなく現実も地球滅亡の危機のすぐ縁までもはやわれわれは来てしまっているのかもしれない。ブラックホールのすぐ縁まで来てしまっているのではないか。

あ、そういう観念的なことばかりあまり強調し過ぎると映画がツマラナクナッテしまうのでこれ以上はよしますが。

さっきも書いたように、映像はすごいんだけど人間ドラマが希薄だとか、逆に人間ドラマは面白いのに映像がショボイいとかちゃっちいとかテレビゲームみたいだとか、そういうがっかり感はいっさいない。断言できる。

難解な映画ではあるがSFの世界で、この先もずーっと語り継がれるような傑作がついに登場したなあという感じです。  

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