ヒロシコ

 されど低糖質な日日

映画『天才スピヴェット』感想

『天才スピヴェット』を見に行く。どうでもいい情報だけど宮沢りえさんの『紙の月』でも見ようかと出かけて時間が合わず、急きょこっちに変更した。よって僕的にはまったくのノーマーク。だからってのもあるかもしれないが、めちゃめちゃ楽しかったです。すばらしい。

どういう話かというと、10歳の天才少年T・Sスピヴェットくんの発明がスミソニアン博物館の科学賞を受賞することに決まり、授賞式に出席するためT・Sくんは家族に内緒でたったひとりモンタナの牧場からワシントンD.C.までアメリカ大陸を横断するという話だ。

――以下、ネタバレあり。

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T・Sくんは女優志望のお姉さんとカーボーイのお父さんと昆虫博士のお母さんと愛犬といっしょに暮らしている。実は一年前まで双子の弟がいたが銃の暴発事故で弟は死んだ。弟の方はT・Sくんと正反対、活発で丈夫でその点がカーボーイのお父さんの大のお気に入りだった(とT・Sくんは思っている)。

弟の死でスピヴェット一家はみんな(愛犬さえも)心にぽっかり穴が開いたみたいになった。それぞれ自分のことだけにのめり込み(傍目には心ここにあらずな感じ)もはや家族はバラバラ。T・Sくんはそんな家庭に居たたまれなくなって自分を必要としてくれる居場所を求め旅立つというわけだ。

映画の大きな部分を占めるのは少年のアメリカ大陸横断の旅というか冒険についての話。これが抜群に面白い。真夜中に置手紙ひとつ残して家を出る。貨物列車に無賃乗車。あとは見てのお楽しみだが、もう出発のくだりからしてせつなさと「おおそうくるか!」というユーモアの連続だった。

なんか全部あらすじ書きたくなっちゃうなあ。まあよすけどね。列車が通過する大自然の美しさとかときどき立ち寄る町の風情なんかがいかにも抒情的でよかった。冒険の旅の途中で出会う大人たちとのエピソードは、妙にドキドキしたり心温まる不思議な感じであふれていた。

T・Sくんを取り巻く大人たちへの冷静な観察眼も見逃せない。10歳の少年だけにはじめから人間を疑ったりしてないところがハッとさせられる。ホームレスのおじさんとかヒッチハイクで乗せてもらうトラックの運転手とか、いい人なのかどうなのか。

学校の先生や警官やスミソニアン博物館の責任者のおばさんとかケーブルテレビ局の番組MCのおじさんとかね、頭ごなしに子ども扱いしたり利用しようとたくらむ人もいる。いずれもT・Sくんの目をとおした大人たちなんですね。そこはでも思いちがいしないようにしないと。

そしていちばん大事なテーマは家族の再生の話であるということ。いまふうにはいちばんありふれた話かもしれない。でもなんでだろう、見終わってすごくしあわせな気分になるのは。感激して涙ぐんでたし。だれかがだれかに愛されているのを見届けるのって、やっぱりジーンと心に沁みるんだなあと思った。

授賞式のスピーチは感動的でしたね。天才少年なのにちっとも厭味にならなくて。T・Sくんを演じた少年がなによりキュート。もし僕が女子高生だったらギュッと抱きしめたくなるくらいだ。寡黙で強いお父さんもかっこいいがお母さん役のヘレナ・ボナム=カーターさんさんが僕はとくによかった。

ファンタジックで独創的な映像も見応えあったなあ。ありふれた表現で申し訳ないけど飛び出す絵本とか仕掛け絵本のようだった。ただ3Dメガネは僕のようなメガネ男子(たぶん女子にも)にはどうしようもなくハンディがあるような気がしてならない。

あ、でもこの映画マジで楽しいよ。上映時間も105分と短いしいうことなし! 

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