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美術展『夢見るフランス絵画~印象派からエコール・ド・パリへ』感想

渋谷 Bunkamura ザ・ミュージアムで『夢見るフランス絵画~印象派からエコール・ド・パリへ』を見る。フランス絵画といえばいちどは目にし耳にしたことがある巨匠16人の名画71点が集められた展覧会だという。しかもそのすべてが日本の個人コレクションだというから驚くばかりだ。

以下、いつものようにダラダラと感想というか印象を書いていきます。

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まずはセザンヌから《大きな松と赤い大地(ベルヴュ)》ほか2点。失礼だけどセザンヌの風景画って、僕にはどれも中学生が写生した水彩画みたいに見えちゃうんだよね。といつも思うんだけど、今回もやはりおなじことを思った。えらそーじゃないところがいい。

モネは《エトルタ、夕日のアヴァル断崖》がよかった。よく見ると不思議な光景なのに、とっても目を惹くきれいな絵。夕日が沈んだあとの海と断崖。《睡蓮のある池》は、こないだのチューリヒ美術館展で見た大きな睡蓮と比べて、こっちはずいぶんはっきりとわかりやすい睡蓮だった。キャプションによると、中央で2分割されたうちの右側半分だという。

ルノワールの《宝石をつけたガブリエル》は、その豊満な肉体美にうっとり。そして色使いが案外シック。このくらいのぼんやり感がちょうどいい。モディリアーニ《バラをつけた若い婦人》《小さなルイーズ》の2点、長い首とその首のかしげ具合、鼻の曲がり具合に、遠くからでも「あ、モディリアーニだ」とすぐわかる。この人、性格がひねくれていたのかもしれないなあ、となんとなく思いました。あと《小さなルイーズ》の相対的な腕の太さ。

藤田嗣治《マドレーヌと猫のいる自画像》も藤田のいつものモチーフだし、シャガールもあいかわらずのシャガール。いちばん多い出品がユトリロの11点で、ユトリロの絵はどれも真面目そうで好きだけど《雪のモンマルトル界隈》なんていいね。

でも個人的に今回のハイライトはユトリロに次ぐ10点の作品が並んだヴラマンクだった。《雪の道》《嵐のあとの村》《赤い屋根のある風景》《踏切のある風景》そのほか静物画も2点あっだが、みな荒々しいタッチでキャンバスのなかにただならぬ不穏な空気が満ち溢れているのがよかった。圧巻。

逆に、いっしょに行ったカミさんは、このヴラマンクの絵を怖いといってあまり好きになれなかったみたいだけど。途中僕をある絵の前に引っ張っていき、「人の顔が見えるでしょ。ほら、ここのところが目で」なんて気味悪いことをいいだす始末。帰ってその絵をインターネットで検索してみたんだけど、不思議とどの絵だったか見つけられない。ケチって図録買わなかったから、いまになってすごく後悔している。ということも含めてヴラマンク面白い。

海外の有名な美術館から取り寄せた目玉がないせいか、休日だというのに館内はわりと空いていて、ゆっくり見て回ることができた。いずれも展示作はそれぞれの作家の代表作という感じの絵ではないかもしれないが、かえって全体的に落ち着いたとってもいい展覧会だなあと思った。

かつてフランスに憧れ、パリに憧れ、フランス絵画に憧れ、この数々の名画を蒐集せざるをえなかった人のやむにやまれぬ気持ちが、会場全体のそこかしこからしみじみと立ちのぼってくるようだった。